亀のことば辞典
ことわざ、慣用句、亀から生まれた日常語、世界の亀のことば。日本語は、思っているより亀でできています。
ことわざ・慣用句
- 鶴は千年、亀は万年つるはせんねん、かめはまんねん
- 鶴は千年、亀は一万年生きるとされる、長寿とめでたさの代表格。婚礼衣装や祝いの品に鶴亀が描かれるのはこのことわざゆえです。由来は古代中国の神仙思想にさかのぼります。
- 亀の甲より年の功かめのこうよりとしのこう
- 長年の経験は何より貴重だという意味。「亀の甲(こう)」と「年の功(こう)」の語呂合わせで、万年生きる亀の甲羅すら、人生経験の前では引き立て役です。
- 月とすっぽんつきとすっぽん
- どちらも丸いけれど、まるで比べものにならない二つのもののたとえ。すっぽん(スッポン)も立派な亀の仲間ですが、夜空の月と並べられてしまいました。
- うさぎとかめうさぎとかめ
- イソップ寓話に由来する、日本でもっとも有名な亀の物語。「もしもし亀よ、亀さんよ」の唱歌でおなじみ。油断した兎を、歩みを止めない亀が追い抜きます。
- 亀の年を鶴が羨むかめのとしをつるがうらやむ
- 千年生きる鶴が、万年生きる亀を羨ましがる。十分に恵まれていても、上には上がいて、人の欲には際限がないことのたとえです。
- 盲亀の浮木もうきのふぼく
- 百年に一度だけ海面に浮かぶ盲目の亀が、たまたま流れてきた木の穴に頭を入れる——仏教で、人として生まれ仏法に出会えることの途方もない有り難さを表すたとえ。転じて、めったにない幸運のこと。
- 亀鳴くかめなく
- 俳句の春の季語。実際には亀は鳴きません。それでも「亀が鳴く」というありえない情景に、春ののどかさを託してきました。空想が公式に認められている、俳句の世界の不思議なことばです。
亀からできた日常語
- 亀裂きれつ
- ひび割れを意味する日常語ですが、字を見ると「亀の裂け目」。亀の甲羅に走るひび割れのような模様にたとえた言葉とされます。さらに古代中国には甲羅を焼いてひびで占う「亀卜(きぼく)」があり、「亀」の字が「ひび」の意味を持つ背景になったとも言われます。日常語の奥に、甲羅と占いの歴史が透けて見えます。
- 亀甲きっこう
- 亀の甲羅の六角形が連なる伝統文様。正倉院宝物の時代から着物・工芸・家紋に使われ続けています。「亀甲縛り」「亀甲模様」など、六角形のものはだいたい亀甲と呼ばれます。Kamepediaのロゴの甲羅にも隠れています。
- 亀の子たわしかめのこたわし
- 1907年(明治40年)生まれのロングセラーたわし。丸くて反った形が子亀にそっくりなことから名付けられ、いまも現役の登録商標です。100年以上、台所で泳ぎ続けている子亀です。
- ゼニガメぜにがめ
- ニホンイシガメの子亀の愛称。小さな甲羅が穴あき銭(銭)に見えることから江戸時代にこう呼ばれました。金運の縁起物として大切にされ、いまもこの名前で呼ばれ続けています。
物語と伝説
- 浦島太郎うらしまたろう
- いじめられていた亀を助けた浦島太郎は、お礼に竜宮城へ招かれます。乙姫にもらった玉手箱を開けると——。亀が異世界への案内役を務める、日本でいちばん有名な昔話。恩返しする亀の物語は日本各地に残っています。
- 玄武げんぶ
- 北の方角を守る聖獣。亀に蛇が絡みついた姿で描かれます。奈良県のキトラ古墳(7〜8世紀)の壁画にも登場し、京都の北の玄武神社など、地名や社名に今も生きています。
世界の亀のことば
- slow and steady wins the race英語
- 「うさぎとかめ」の教訓の英語版。急がば回れに近い意味で、英語圏では亀はコツコツ型の努力家の象徴です。
- turtles all the way down英語
- 「世界は巨大な亀の背に乗っている」「ではその亀は何の上に?」「下までずっと亀ですよ」——無限に続く問いを笑う、英語圏の有名な哲学ジョーク。宇宙論や論理学の本にたびたび登場します。
- come out of one's shell英語
- 「殻から出てくる」=引っ込み思案だった人が打ち解けること。英語では、人見知りはみんな小さな亀です。
- Schildkröteドイツ語
- ドイツ語で亀。直訳すると「盾ガエル」。甲羅を盾に見立てた、武骨で愛らしい命名です。
- 龟 / 거북선中国語・韓国語
- 中国で亀は古来、龍・鳳凰・麒麟と並ぶ瑞獣で、石碑の台座(亀趺)にもなりました。一方、現代の口語では悪口に使われることもある、二つの顔を持つ字です。韓国語の「コブクソン(亀甲船)」は16世紀の名将・李舜臣の装甲軍艦。亀の甲羅を持つ船として歴史に名を残しています。


