亀の名前の由来辞典
ミドリガメの正体、ゼニガメの二つの顔、学名の読み解き方。名前をたどると、亀がもっと見えてきます。
ペットショップの名前・よび名
- ミドリガメ→ アカミミガメ
- ペットショップの定番だった呼び名。正体はアカミミガメ(ミシシッピアカミミガメ)の子亀です。子どものうちだけ甲羅が鮮やかな緑色なのでこう呼ばれました。大人になると緑ではなくなり、名前だけが残ります。
- ゼニガメ→ クサガメ
- 「銭亀」。小さな甲羅が穴あき銭に見えることから。ややこしいのは指す種が時代で変わったこと——江戸時代はニホンイシガメの子亀を指しましたが、現在ペットショップで「ゼニガメ」として売られているのはほぼクサガメの子亀です。あなたが飼っていたゼニガメは、たぶんクサガメ。
- ゾウリガメ→ クサガメ
- 「草履亀」。図鑑には載っていない俗称・地方名で、平たく長い甲羅を草履に見立てた呼び名です。多くの場合、大きくなったクサガメやイシガメ類を指して使われてきました。標準和名ではないため、図鑑で検索しても正式名では出てきません——このサイトでは「よび名」からも検索できるようにしてあります。
- イシガメ→ ニホンイシガメ
- 正式には「ニホンイシガメ」。石のような甲羅の色あいから「石亀」。ことわざ「石亀の地団駄(いしがめのじだんだ)」にも登場します。
日本の亀の名前
- クサガメ→ クサガメ
- 危険を感じると臭腺からにおいを出すことがあるため「臭亀」。和名として定着したのは1934年の論文からと、意外と新しい名前です。甲羅に3本のキール(隆起)があるのが見分けポイント。
- スッポン→ チュウゴクスッポン
- 語源は諸説あり、水に飛び込む「ずぼん」という音から、という説が親しまれています。漢字では「鼈」。「月とすっぽん」のすっぽんはこの亀です。
- ウミガメ→ アオウミガメ
- 海の亀、そのまま。ただし「アオウミガメ」の青は甲羅ではなく体脂肪の色、「アカウミガメ」の赤は甲羅の赤褐色、「タイマイ」は漢名「玳瑁」の音読みと、一種ずつ由来が違います。
- ワニガメ→ ワニガメ
- ワニのようにゴツゴツした甲羅と強いあごから「鰐亀」。英名はさらに直球で alligator snapping turtle(ワニのように噛みつく亀)。
- カミツキガメ→ カミツキガメ
- 「噛みつき亀」。学名の種小名 serpentina は「ヘビのような」で、長い首の素早い動きから。日本語は行動、ラテン語は首に注目した命名です。
- リクガメ→ ヘルマンリクガメ
- 陸の亀。「ヘルマンリクガメ」のヘルマンは18世紀フランスの博物学者ヨハン・ヘルマンの名前です。動物の和名には、こうして人名がそのまま残っていることがよくあります。
世界の亀の名前
- マタマタ→ マタマタ
- 南米先住民の言葉に由来するとされ、「皮膚」を意味するという説が知られています。ヒラヒラした皮膚の飾りを持つ姿そのままの名前です。
- ガラパゴスゾウガメ→ ガラパゴスゾウガメ
- ゾウガメは象のような足と皮膚から。そして実は逆で、ガラパゴス諸島の名前のほうが亀に由来します——スペイン語の galápago は「亀」。つまり「亀の島のゾウガメ」。
- アルダブラゾウガメ→ アルダブラゾウガメ
- インド洋のアルダブラ環礁の名を背負ったゾウガメ。学名の gigantea は「巨大な」。名前のとおり、そして期待どおりの亀です。
- オサガメ→ オサガメ
- 甲羅の縦の隆起を機織りの道具「筬(おさ)」に見立てた名前と言われます。学名 Dermochelys coriacea は「革の皮膚の亀」。日本語は道具、ラテン語は質感で名付けました。
- スッポンモドキ→ スッポンモドキ
- 「もどき(擬き)」は「〜に似て非なるもの」。スッポンに似ているけれど別の科の一属一種で、英語では鼻先から pig-nosed turtle(ブタバナガメ)。似ている先が日英で違うのが面白いところ。
学名のはなし
- Testudines(カメ目)
- 亀の仲間全体を指す学名。ラテン語の testudo(亀)から。古代ローマでは、兵士が盾を頭上に掲げて進む密集隊形も「テストゥド(亀甲隊形)」と呼ばれました。ローマ人も亀に守りの完成形を見ていたのです。
- Chelonia / chelys
- ギリシャ語で亀を意味する khelōnē(ケローネー)は、多くの亀の学名に潜んでいます。Chelonia(アオウミガメ属)、Dermochelys(オサガメ属)、Macrochelys(ワニガメ属)……学名に chel の文字を見つけたら、そこに亀がいます。
- mydas / imbricata / elegans
- 種小名は「その種らしさ」の一言メモです。アオウミガメの mydas は「湿った」、タイマイの imbricata は「瓦ぶきの(甲羅が瓦のように重なる)」、インドホシガメの elegans は「優美な」。学名は読めると、図鑑がもう一段楽しくなります。


