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顧問コラム: 3匹の亀と、開くはずのない扉
子どもの頃、3匹の亀と暮らしていました。ミドリガメ、ゼニガメ、ゾウリガメ——と、当時は呼んでいました。カメ部顧問の実話です。
子どもの頃、家に3匹の亀がいました。ミドリガメ、ゼニガメ、ゾウリガメ。種類の違う3匹だと思っていましたが、いま図鑑を作る側になって調べてみると、ミドリガメはアカミミガメの子亀の流通名、ゼニガメはおそらくクサガメの子亀、そしてゾウリガメは図鑑に載っていない俗称で、大きくなったクサガメあたりを指していたようです。つまりあの3匹は、もしかすると2種類だったのかもしれません。呼び名の話は名前の由来辞典に書いたので、同じ「あれ?」を持っている人は覗いてみてください。
あの夏、家族で1週間、北海道を旅行しました。帰ってくると、水槽が空でした。
どうやって出たのか、いまだに分かりません。蓋はあったはずで、水槽から出たとして、そこから家の外に出る経路が説明できない。でも亀たちは確かにいなくなっていて、家の中をどれだけ探しても見つかりませんでした。
しばらく経ったある日、近所の人が教えてくれました。道路で、車に轢かれた亀がいたよ、と。
あのときの気持ちは、大人になったいまでも、ちゃんと悲しいままです。亀はのろまだと言われるけれど、1週間あれば水槽を出て、家を出て、道路まで辿り着く。そのことを、わたしは一生分の実感として知っています。
だからこのサイトには、脱走の記事があります。壁の高さは甲長の2〜3倍、蓋は載せるのではなく固定する、長い留守の前には環境を見直す——あの夏のわたしに教えてあげたかったことを、ぜんぶ書きました。
カメ部の顧問として367種の亀を一種ずつ眺めていると、ときどき考えます。また亀と暮らそうかな、と。今度迎えるなら、数十年の付き合いになることも、脱走の名人だということも、ぜんぶ分かったうえで迎えられます。あの3匹が教えてくれたことです。
(カメ部顧問)



