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亀と時間 — 2億年を生きる設計

亀は恐竜の全盛より前からいて、恐竜の絶滅を見送りました。地球でいちばん時間に強い脊椎動物の話です。

恐竜より、先輩

最古級の亀のひとつ、プロガノケリスが生きていたのは約2億1000万年前の三畳紀後期。ティラノサウルスの登場より1億年以上前に、甲羅を背負った亀はすでに地上を歩いていました。

しかもその姿は、現在の亀と驚くほど同じです。首を引っ込められないなどの違いはあれど、基本設計は完成済み。亀は「最初からほぼ正解だった」生き物なのです。

最古級の亀プロガノケリスの骨格標本
プロガノケリスの骨格(約2億1000万年前) ・ Wikimedia Commons (Public Domain)

甲羅ができるまで

2008年に中国で見つかったオドントケリス(約2億2000万年前)は、進化の途中経過を見せてくれました。この亀にはお腹側の甲羅(腹甲)しかなく、歯もありました——甲羅は、お腹側から先に完成したのです。

肋骨と背骨が広がって板になるという前代未聞の設計(甲羅のひみつへ)は、一度完成すると2億年間ほとんど変わりませんでした。変える必要がなかったのです。

大量絶滅の、生き残り

亀の歴史は、地球の大量絶滅の歴史と重なります。恐竜を滅ぼした6600万年前の隕石衝突すら、亀の系統は生き延びました。水辺にすみ、代謝が低く、しばらく食べなくても平気——危機の時代に、亀の「ゆっくり」は最強の生存戦略でした。

「のろま」とからかわれてきた性質こそが、2億年分の勝ち筋だったわけです。うさぎとかめの寓話は、地質学的スケールでも正しかったことになります。

そして今が、いちばんの危機

隕石も氷河期も乗り越えた亀ですが、現代はその2億年でおそらく最悪の時代です。現生の亀の約半数に絶滅の恐れがあるとされ、原因は乱獲・生息地の喪失・気候変動——つまり人間です。

2億年の先輩を、私たちの世代で途切れさせるわけにはいきません。図鑑の保全ステータスの赤いタグは、その現在地を示しています。

放射状の模様が美しいホウシャガメ
マダガスカルのホウシャガメ。この見事な甲羅ゆえに乱獲され、絶滅寸前とされています ・ 写真: Charles J. Sharp, Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)

甲羅のひみつ190歳のジョナサン