特集
亀の赤ちゃん図鑑 — 500円玉からはじまる人生
生まれた瞬間から、誰にも育てられずに生きていく。小さくて、けなげで、意外とたくましい子亀たちの話です。
手のひらどころか、指先サイズ
生まれたての子亀は、種類にもよりますが甲羅の長さ3〜5cmほど。500円玉と同じくらいのサイズから人生(亀生)が始まります。アオウミガメの子でも約5cm——あの1mを超える大きな体は、すべてここからのスタートです。
小ささは可愛さであると同時に、弱さでもあります。子亀の時代は鳥・魚・カニ・哺乳類、あらゆる捕食者に狙われる、亀の一生でいちばん危険な季節です。

卵歯(らんし)——一度だけ使う道具
子亀は、くちばしの先にある「卵歯(カルンクル)」という小さな突起で内側から卵の殻を破って生まれてきます。この道具は孵化のときに一度だけ使われ、その後は自然になくなってしまいます。
殻を破ってもすぐには出てきません。お腹に残った卵黄(ヨークサック)を吸収しながら、数日かけて外に出る準備をすることもあります。生まれる前から、亀はマイペースなのです。
親は、育てない
亀の子育ては、潔いほどシンプルです——「産んだら、終わり」。母亀は卵を産み場所を選んで丁寧に埋めますが、孵った子と再会することはありません。子亀は生まれた瞬間から、食べ物探しも敵からの逃げ方も、すべて自前です。
誰にも教わらずに海の方角がわかり、泳ぎ方を知っている。小さな体に、2億年分の生存マニュアルがあらかじめ書き込まれています(ウミガメの大脱走はウミガメの産卵特集へ)。

砂の温度が、性別を決める
多くの亀では、卵のときの温度で性別が決まります(温度依存性決定)。ウミガメでは、砂が温かいとメスが、涼しいとオスが多く生まれるとされます。
だからこそ、温暖化は亀の未来に直結します。産卵地の砂が熱くなりすぎると、生まれる子がメスばかりに偏ってしまう——子亀の可愛さの裏には、そんな現在進行形の課題もあります。



